生命保険のための医学知識

生命保険会社の査定医長として、日々の
引受と支払査定業務で気付いた病気と
手術について解説して行きます。
最近の担当保険分野は、生命保険、
医療保険、がん保険、団体医療保険、
海外旅行保険、医師賠償責任保険、
就業不能団体信用費用保険など多岐に
わたっています。
査定者や営業担当者の医学知識の向上に
少しでもお役に立てれば幸いです。

 前縦郭腫瘍(anterio mediastinal tumor)とは、心臓、大血管、気管、食道を除いた縦隔内に発生する腫瘍をいい、いろいろな組織型があり良性と悪性の腫瘍があります。頻度としては胸腺腫がもっとも多く、そのほか、神経性腫瘍、奇形腫、先天性嚢胞、リンパ性腫瘍、甲状腺腫瘍などの順でみられ、約4分の1が悪性腫瘍といわれています。

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一般的に、総胆管と主膵管は十二指腸壁内で合流して共通の管を形成し、十二指腸乳頭部括約筋(オッディの括約筋)を介して十二指腸腔に開口します。この開口部はファーター乳頭(Vater papilla)とよばれます。しかし、膵胆管合流異常は、膵管と胆管が十二指腸壁外で合流する先天性の形成異常で、膵管癒合不全を来します。胆管拡張を伴う「先天性胆道拡張症」と、胆管に拡張を認めない「胆管非拡張型」膵胆管合流異常症に分類されます。
 原因は、十二指腸乳頭にあるオッディの括約筋の作用が膵胆管合流部に働かないほど、膵管と胆管の合流した共通管が長いことです。このため膵液と胆汁の相互逆流が起こります。これにより、さまざまな難治性病態が起こります。
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ナルコレプシー(narcolepsy)は睡眠障害の1つで、過剰な眠気を来す中枢性症候群です。日中に強い眠気を起こし、眠り込んでしまうなどの過眠症の発作を起こします。2000人から4000人に1人が罹患し、睡眠発作ともよばれます。原因は、神経細胞がヒポクレチン(オレキシン)を作り出せなくなることによるものです。特徴的な症状として、カタブレキシー(情動脱力発作)、入眠時幻覚、睡眠麻痺(金縛り)があります。
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良性発作性頭位めまい症(Benign Paroxysmal Positional Vertigo; BPPV)とは、特定の頭位で突然に誘発される末梢性の良性めまい症で、これに随伴する眼振が特徴です。Barany(1921)によって報告され、Dix & Hallpike(1952)により疾患概念が確立された疾患です。

BPPV は、内耳にある耳石器の卵形嚢(垂直方向の動きを感知する感覚器官)から何らかの原因で耳石(平衡石のこと。平衡感覚と聴覚に関与する)が剥がれ落ちて、蝸牛内の有毛細胞に付着したり(クプラ結石説)、浮遊耳石がリンパ液内を漂うため(半規管結石説)にめまいが起きると考えられています。耳石剝離の原因としては、頭部外傷や他の内耳疾患、加齢による退行変性やホルモンの影響も関与しているといわれますが、半数以上は原因不明です。

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大動脈弁閉鎖不全症(aortic regurgitation; AR)とは、何らかの異常により、大動脈弁尖間の接合が障害されて逆流が生じる状態です。つまり心臓の弁の1つである大動脈弁がきちんと閉じなくなる病気です。大動脈弁がきちんと閉じなくなると、上行大動脈に送った血液がその弁尖の間隙を介して左心室に逆流するようになります。逆流が起こると左心室に大きな負担が伴うため、進行すると左心室の肥大と機能低下(左心不全)が起こります。
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小腸内細菌異常増殖症(small intestinal bacterial overgrowth; SIBO)は、小腸内で細菌が異常に増えることにより生じる疾患です。上部消化管における細菌の数の増加と型の変化が起こる疾患と定義されます。

生体には、細菌の過剰増殖を予防する内因性防御機序がいくつもあります。たとえば、胃酸分泌、小腸の蠕動運動、無傷な回盲弁、腸液内の免疫グロブリン、膵液と胆汁の静菌作用などです。

SIBOの原因は通常複雑で、抗細菌予防機序の破綻(無塩酸症、膵臓外分泌能低下、免疫異常)、解剖学的異常(小腸の通過障害、憩室、瘻孔、手術による盲端、回盲部切除の既往)、運動障害(強皮症、糖尿病による自律神経症、放射性腸炎、小腸の偽閉塞)と関連しています。具体的な原因疾患としては、腸閉塞、消化管運動障害、慢性膵炎などが知られています。 SIBOはとくに開腹手術後に頻発しやすく、小腸の器質的障害と機能的障害により小腸の吸収・代謝といったサイクルが回らなくなって腸内細菌叢が異常増殖し、脂肪やビタミンB12を中心とする栄養素の吸収障害をきたします。
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大動脈弁狭窄症とは、左室流出路にある大動脈弁の弁口狭窄にともなう慢性的な左心室への圧負荷を起こす病態です。圧負荷に対する代償機能として、左室肥大と左室線維化が起こります。大動脈弁狭窄症の原因は、大動脈弁の変性つまり弁尖の硬化、肥厚、線維化と石灰化が生じることであるが、その厳密な機序は明らかではありません。

大動脈弁狭窄症を引き起こす原因として考えられているものには、先天性、動脈硬化、リウマチ熱後遺症などがあります。先進国では、加齢にともなう大動脈弁尖の変性つまり動脈硬化による大動脈弁狭窄症が最も多く、手術が必要な重症の大動脈弁狭窄症の80%を占めます。動脈硬化による大動脈弁狭窄症患者は、高齢者で冠動脈硬化を合併していることが多いため、死亡リスクが高いです。

先天性大動脈弁狭窄症の原因としては、大動脈二尖弁があります。本来、大動脈弁の弁尖は3枚ですが、生まれつき2枚の人がいます。先天性大動脈二尖弁は、生まれてくる子供の2%前後に出現すると言われています。リウマチ熱は溶連菌による咽頭炎が引き起こす全身性の自己免疫疾患です。発熱や関節炎だけでなく心筋組織も侵すため、弁にも炎症を起こします。ほとんどは小児期にかかる疾患ですが、成人後にその後遺症として大動脈弁狭窄症を起こすことがあります。リウマチ熱性大動脈弁狭窄症は、弁交連部の癒合が特徴です。近年は、抗菌薬の普及や衛生環境の向上もあって、リウマチ性の動脈弁狭窄症は減少しています。

一方で、高齢化に伴う石灰化性の大動脈弁狭窄症が増えてきています。大動脈弁狭窄症で、心不全,失神,胸痛などの自覚症状が出現すると平均余命は2~3年といわれています。

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心臓にある弁(弁尖、valve leaflet)に障害が起き、本来の役割を果たせなくなった状態をいいます。弁の開きが悪くなり血液の流れが妨げられる「狭窄(stenosis)」と、弁の閉じ方が不完全なために血液が逆流してしまう「閉鎖不全(regurgitaion)」があり、大動脈弁(aortic valve)と僧帽弁(mitral valve)に多く起こります。弁膜症の原因には、先天性(大動脈二尖弁など)と後天性(リウマチ熱、動脈硬化、心筋梗塞、変性など)があり、症状は息切れ、疲れやすい、胸痛、呼吸困難などが出てきます。


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性同一性障害(Gender Identity Disorder; GDI)とは、「生物学的性別(sex)と性別に対する自己意識あるいは自己認知(gender identity)が一致しない状態である」と定義されています。つまり生物学的性別と性の自己意識が一致しないために、自らの生物学的性別に持続的な違和感を持ち、自己意識に一致する性を求め、時には生物学的性別を己れの性の自己意識に近づけるために性の適合を望むことさえある状態です。このため生活上のあらゆる状況においてその性別で扱われることに精神的な苦痛を受けることが多いようです。

性同一性障害は、自らの性別に関するジェンダー・アイデンティティの問題です。一方、同性愛は性対象として同性の相手を選ぶことを意味しています。したがって、性同一性障害を有する人の中には、異性愛の人もいれば同性愛、あるいは両性愛の人もいます。

平成15年7月16日に性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律が制定され、性適合手術を受けていることなどを要件として、戸籍上の性別を変更できるようなりました。

日本精神神経学会「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン (第3版)」では、性同一性障害は精神病ではないと記載されています。続きを読む
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ヘルプ症候群(HELLP syndrome)とは、妊娠中あるいは産褥期に、溶血(hemolysis)、肝酵素値上昇(elevated liver enzymes)、血小板減少(low platelet)を呈し、多臓器障害をきたして母体生命を脅かす、重篤な妊産婦救急疾患です。特に肝臓が侵され溶血・肝酵素の上昇・血小板減少の症状が出現します。肝内あるいは肝被膜下出血のおそれがあり、重症な妊娠高血圧症候群のため母児ともに危険となります。症状は突然の上腹部痛や心窩部痛、疲労感・倦怠感・嘔吐・食欲低下など様々です。主な合併症としては、播種性血管内凝固症候群(DIC)、常位胎盤早期剥離、腎不全などが起こります。
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