生命保険のための医学知識

生命保険会社の査定医長として、日々の
引受と支払査定業務で気付いた病気と
手術について解説して行きます。
最近の担当保険分野は、生命保険、
医療保険、がん保険、団体医療保険、
海外旅行保険、医師賠償責任保険、
就業不能団体信用費用保険など多岐に
わたっています。
査定者や営業担当者の医学知識の向上に
少しでもお役に立てれば幸いです。

皮膚科

疥癬とはヒゼンダニ(疥癬虫)という小さなダニが人の皮膚に寄生しておこる、かゆみを伴う皮膚の病気です。ヒゼンダニはヒトでのみ感染し生息できる寄生虫で、皮膚の角質層にトンネルを掘ります。この病気には通常疥癬と角化型疥癬(ノルウェー疥癬)と呼ばれる2種類の病型があり、角化型疥癬の方が通常疥癬より感染力が強いです。それはヒゼンダニの数が大きく違うためです。通常疥癬のヒゼンダニの数が数十匹以下なのに対し、角化型疥癬は100万~200万匹とされています。

通常疥癬は長い時間、肌と肌が直接ふれることで感染します。少しふれる程度であれば感染することはほとんどありません。稀に、疥癬の患者さんが使用した寝具や衣類などを交換せずに、すぐに他の人が使用することで感染することもあります。

角化型疥癬は感染する力が強いので、短い時間の接触、衣類や寝具を介した間接的な接触などでも感染します。皮膚からはがれ落ちた垢(角質)にも多数のダニが含まれており、感染の原因になることがあります。
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ウイルス性疣贅はヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus:HPV)によって皮膚および粘膜に生じる良性腫瘍です。そのうち皮膚科で扱うものの多くは尋常性疣贅です。疣贅の典型例では、臨床的診断は必ずしも難しくはないですが、時に脂漏性角化症や鶏眼(うおのめ)、胼胝(たこ)などとの鑑別が問題となります。

疣贅の感染様式は、ヒトからヒトへの直接的接触感染が主ですが、間接的接触によっても感染します。例えば銭湯、温泉施設、プール、ジムなど公共施設でHPVに感染したケースが報告されています。また、鮮魚や精肉の処理に従事する人では手指の浸軟がHPVの侵入を助長させ、手の疣贅の発症率が高いことが知られており、職業に関連したHPV感染も起こります。

HPVは健常の上皮には感染しませんが、外傷など損傷を受けた微小な損傷部位から侵入します。表皮最下層の基底細胞の中の表皮幹細胞に特異的に感染し、細胞内から核へと取り込まれ、潜伏感染状態となります。つまり感染していても発病しない状態で、ウイルスが眠りについた状態といえます。
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汎発性帯状疱疹とは、通常の帯状疱疹の皮膚病変に加えて、ウイルス感染リンパ球血症を併発し、全身に水痘様の小水疱が発生する病態です。ウイルス感染リンパ球血症は、皮膚の水痘帯状疱疹ウイルス(HZV)が血管内皮細胞内で増殖することで起こります。免疫不全状態の高齢者、免疫抑制剤の使用者や悪性腫瘍患者に発症します。2つ以上の神経支配領域に同時に帯状疱疹が発症したものを汎発性帯状疱疹または複発性帯状疱疹と呼びます。
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壊疽性膿皮症(pyoderma gangrenosum)は、慢性かつ進行性に好中球性の皮膚壊死が生じる病態で、病因は不明です。血管炎、γ-グロブリン血症、白血病、リンパ腫、C型肝炎ウイルス感染症、SLE、サルコイドーシス、多関節炎、ベーチェット病、化膿性汗腺炎のほか、とくに炎症性腸疾患などの様々な全身性疾患に合併することがあります。免疫応答の異常が関与すると考えられています。好中球走化性に関する問題が関与している可能性があります。病変内ではIL-8が過剰発現しています。約30%の患者では、皮膚に外傷ないし損傷が生じた後に壊疽性膿皮症の潰瘍化がみられ、この現象はパテルギーと呼ばれています。
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腫瘍随伴性天疱瘡(paraneoplastic pemphigus; PNP)は主に血液系腫瘍を随伴し、重篤で多彩な粘膜皮膚症状を呈する自己免疫性水疱形成疾患です。PNPは天疱瘡の亜型であり、高頻度に血液系腫瘍、胸腺腫やキャッスルマン(Castleman)病などを随伴し、PNPの約20%が閉塞性細気管支炎を合併することがあります。適切な治療が施されない場合は、予後が不良です。
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魚鱗癬(ichthyosis)とは、全身の皮膚が乾燥して、皮膚が鱗状になったり、フケが剥がれ落ちたりする病態をいいます。魚鱗性には先天性(遺伝性魚鱗癬)のものもあれば、病気や薬によって生後に発症する後天性魚鱗癬もあります。さまざまな遺伝子変異が原因で、皮膚の一番表面にある表皮細胞に異常が生じ、各層が顕著に肥厚します。最も頻度が高い魚鱗癬である尋常性魚鱗癬(ichthyosis vulgaris)は、常染色体優性遺伝でフィラグリン遺伝子変異により発症します。
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魚鱗癬(ichthyosis)は、魚の鱗のように皮膚の表面が乾燥して硬くなり、剥がれ落ちる病気です。先天性魚鱗癬(congenital ichthyosis)、魚鱗癬症候群(ichthyotic syndrome)と後天性魚鱗癬(acquired ichthyosis)があります。後天性魚鱗癬は、悪性リンパ腫、甲状腺機能低下症、HIV感染症や薬剤(ニコチン酸、トリパラノール、ブチロフェノン)を原因として起こります。乾燥した鱗屑が微細で体幹と下肢に限局する場合と、厚く広範囲に広がる場合があります。
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天疱瘡(pemphigus)とは、自己免疫性水疱症ともいい、皮膚の表皮・粘膜の上皮のある成分を攻撃する抗体が作られ、表皮の細胞がバラバラに離れて皮膚に水疱が現れる病気です。IgG自己抗体が作られる原因は不明で、本来の体質に生活習慣や環境の影響が加わって生じると考えられています。最も多い尋常性天疱瘡では、口腔粘膜に広範囲に痛みを伴うびらんや、全身に発赤・水疱が現れ、火傷状態になり皮膚の表面から大量の水分が失われたり、感染をおこす場合があります。 天疱瘡は次の3つに分類されます。

  1. 尋常性天疱瘡(pemphigus vulgaris)
  2.  落葉状天疱瘡(pemphigus foliaceus)
  3.  腫瘍随伴性天疱瘡(paraneoplastic pemphigus)
尋常性天疱瘡の患者さんが一番多いですが、自己免疫疾患であることを鑑みると生命保険への無条件加入は困難です。腫瘍随伴性天疱瘡は引受不可です。
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皮膚に生じる単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus; HSV)感染症の一種で、上半身の口唇ヘルペス(HSV-1)や下半身の陰部ヘルペス(HSV-2)などがあります。主に顔面・口の周囲に発生することが多く、最初は皮膚に赤く変化し痒くなり、その後に小水疱が出現します。風邪などの病気や紫外線のストレスが、誘因となりやすくなっています。また、HSVの特徴として潜伏感染後の再活性化により再発を繰り返します。HSV感染症の治療は、抗ヘルペスウイルス薬を用います。これにはビダラビン、アシクロビル(ACV)、バラシクロビル(VACV)、ファムシクロビル(FCV)があります。

近年HSV抗体保有率の低下がしてきされており、今後高齢者での初感染が起こりうることが懸念されています。HSV感染症はHSV-1およびHSV-2ともに初感染時にできるだけ早期に抗ヘルペスウイルス薬を投与して、神経節内に潜伏感染するウイルス量を減らすことにより、その後の再活性化を低減できる可能性があります。

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中年以降に発生し、加齢と共に増加する皮膚の良性腫瘍で、皮膚の老化現象のひとつです。 遺伝的要因や日光による露出部の皮膚の老化が誘因と考えられています。掌・足裏以外の皮膚で全身どこにでも発生し、とくに顔面・頭部・前胸部・背部によくみられます。色は褐色調で大きさは数mm~3cmくらい、わずかに盛り上がるものから突出したしこりになるものまであります。通常は見た目やダーモスコピー検査で診断できます。他の疾患、とくに悪性腫瘍などの疑いがある場合、組織を採取し生検を行います。治療法としては、手術、凍結療法、レーザー治療、電気外科的治療などがあります。

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