生命保険のための医学知識

生命保険会社の査定医長として、日々の
引受と支払査定業務で気付いた病気と
手術について解説して行きます。
最近の担当保険分野は、生命保険、
医療保険、がん保険、団体医療保険、
海外旅行保険、医師賠償責任保険、
就業不能団体信用費用保険など多岐に
わたっています。
査定者や営業担当者の医学知識の向上に
少しでもお役に立てれば幸いです。

呼吸器

肺アスペルギローマとは、肺の空洞に真菌球(fungus ball)を呈するものです。単純性肺アスペルギローマ(simple pulmonary aspergilloma; SPA)ともいいます。この空洞は、肺結核治癒後や気管支拡張症などによります。当初は無症状に経過することも多いですが、喀血し致命的になることがあるため、空洞切開菌球除去術を行います。
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侵襲性肺アスペルギルス症(invasive pulmonary aspergillosis; IPA)は日和見感染症( opportunistic infection)で,乾性咳嗽、発熱、胸膜痛で発症し、死亡率は55~80%と予後不良の疾患で、アスペルギルス菌糸が、気管支壁を破って近隣の動脈内に浸潤、塞栓性に血管を閉塞し、出血性梗塞をきたす。胸部X線検査では、単発もしくは多発する粒状、斑状の浸潤影、結節影が出現し、その後、内部にLung ball を有する空洞影を形成する。Lung ballは菌糸、好中球、マクロファージが浸潤して壊死した肺組織の塊であり、アスペルギローマにみられる真菌の塊である真菌球(Fungus ball)とは異なります。 空洞は、好中球数が500/μl 以上に上昇すると出現し、また大量喀血は空洞が出現した後、数日以内に起こる可能性が高いと言われています。
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アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(allergic bronchopulmonary aspergillosis; ABPA)は、アスペルギルス(A. fumigatus)の抗原に対する過敏反応です。治療しないと、気管支拡張症と肺線維症を起こします。
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肺アスペルギルス症は、アスペルギルス属(Aspergillus)の真菌によって引き起こされる肺の感染症です。アスペルギルスは、自然界に広く分布している真菌の1種で、通常は病原とはなりにくい菌ですが、免疫低下状態などにあるヒトに日和見感染症を起こします。また、肺に空洞がある場合にも感染を起こしやすいです。過去に肺の病気によって形成された肺の空洞など、体内の空洞のある部分を侵し、外耳道や副鼻腔に感染症が生じることもあります。真菌のアスペルギルス・フミガートス(A. fumigatus)が原因で起こるものもあります。このアレルギーによって引き起こされる病型がアレルギー性気管支肺アスペルギルス症です。次のように疾患分類されています。

慢性肺アスペルギルス症
肺アスペルギローマ(SPA)
慢性進行性肺アスペルギルス症(CPPA)
慢性空洞性肺アスペルギルス症(CCPA)
慢性壊死性肺アスペルギルス症(CNPA) 
侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)
表在性アスペルギルス症
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好酸球性肺炎は、肺好酸球浸潤症候群ともいい、肺や血流の中に増加した多数の好酸球が現れる肺疾患の総称です。多くの炎症反応やアレルギー反応の際に好酸球が増加し、たとえば気管支喘息では特定の好酸球性肺炎が高い頻度で合併します。症状は軽症の場合もありますが、急性では血液中の酸素濃度が著しく低下し、放置すると数時間から数日で急性呼吸不全を起こします。また、慢性は数週間から数カ月間かけてゆっくりと進行し、重症化します。

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風邪は、主にウイルスの感染による上気道(鼻腔や咽頭等)の炎症性の病気で感冒ともいい、咳嗽・咽頭痛・鼻汁・鼻づまりなどの局部症状、および発熱・倦怠感・頭痛など全身症状が出現した状態のことをいいます。かぜ症候群ともいいます。

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肺線維症とは、呼吸によりガス交換を行う肺胞に線維組織が増えて呼吸困難となる病気です。初期症状は労作時の息切れや呼吸困難ですが、広範囲に肺の線維化が起きると血液中の酸素が慢性的に不足し低酸素状態に陥ります。さらに悪化すると酸素吸入が必要となります。抗がん剤などの薬物の使用によって起こる薬剤性肺炎、塵肺、アレルギー性肺炎、肺結核、膠原病などが原因となりますが、原因不明のものもあります。

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肺化膿症(lung abcess)とは、肺胞に細菌が増殖し、それに対して白血球を主とする炎症細胞や感染防御物質が集まり、炎症を起こした状態の感染症です。加えて、組織の壊死を伴うのが特徴的な病態です。その結果、肺内に空洞が広がり、液状の壊死物質が空洞内にたまります。口腔内に存在する嫌気性菌の誤嚥により気道から侵入したり、また骨盤腔内の膿瘍から血行性感染することもあります。肺炎同様、発熱・咳・膿性の痰がみられ、それに加えて胸痛が起こることもあります。化膿性肺炎や肺膿瘍と同義です。

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肺炎(pneumonia)は、肺の肺胞領域の炎症を主体とする下気道感染症です。ウイルスや細菌などの病原微生物が肺胞に進入・増殖して、肺胞壁に滲出性変化を引き起こしたものです。全身症状として発熱・悪寒・頭痛・関節痛などがあり、呼吸器症状として咳・痰・胸痛・呼吸困難などがあります。基礎疾患の有無に注意が必要です。臨床現場では、発生場所により次のとおり分類されます。

  • 市中肺炎 (Community-acquired pneumonia; CAP) 
  • ヘルスケア関連肺炎 (Healthcare-associated pneumonia; HCAP)
    日本では介護・医療関連肺炎(Nursing and healthcare-associated pneumonia; NHCAP) 
  • 院内肺炎 (Hospital-acquired pneumonia; HAP) 
  • 人工呼吸器関連肺炎 (Ventilator-associated pneumonia; VAP)
診療録などでは、略語で記載されているとが多いので、頭の隅に入れておくと良いでしょう。
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すりガラス陰影(ground glass opacity; GGO)とは、高分解能CT検査において肺血管や気管支構造が透見できる程度の淡い濃度上昇域をいう。次のような疾患が考えられる。

  1. 異型腺腫様過形成(AAH)
  2. 上皮内腺癌(旧BAC)(AIS)
  3. 微小浸潤性腺癌(旧BAC)(MIA)
  4. 肺胞置換型浸潤腺癌(LPA)
  5. 転移性肺腫瘍
  6. リンパ腫
  7. 限局性炎症
  8. 限局性肺線維化
  9. 限局性出血

炎症で間質性肺炎だけが起きているのであれば問題ないが、癌や前癌状態である可能性もあるため、十分な経過観察が必要である。なお、10mmを超えるようであれば切除し診断確定することが望ましいようである。

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